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「で、異世界で何してきたの? 魔物と戦った?」
見慣れているはずのこいつのニヤニヤ顔がこんなに憎らしいのも、俺が間違いなく異世界を経験してきた証拠なのだと、怒りたいのをぐっとこらえる。
「いや、それがさ、なんだろう……。クエストをひとつクリアしたら終わった感じ? 正直なんで俺が行ったのかもよくわからなくて、気づいたら向こうにいて、気づいたらこっちに帰ってきてた。そんなかんじ」
「それ夢見てただけじゃね?」
悪意のない言葉が、経験者と未経験者の隔たりを感じさせる。
「いや、でも村を救ったのは救ったんだよ。なんか地震がめっちゃ起こるから、神の怒りを鎮めるために生贄を捧げようみたいな話になってて、そこへ俺が割り込んで、地理で習ったプレートの説明をしてさ」
「よくそれ信じたな、生贄って発想するような古代人が」
「それが、信じてもらえなくて、こいつは怪しいまじない師だ、とか言われて俺を生贄にしようって話になっちゃって」
「最悪じゃん」
「それで、『生贄なんて何の意味もないですよ。神様が人の死骸なんてもらって喜ぶわけがないでしょう。家の前に動物の死骸置かれたらあなたたちはどう思いますか!?』とビシッと言ってやって」
「意外と度胸ある」
「生贄は死んでない、とか、神様と人間を同列で語るなんて冒涜だ、とかなんとか言われて」
「向こうも信念があるな」
「村人の命をもらって喜ぶ神なんかこっちから捨てちまえ! って言ったら村人激怒して大喧嘩。そして身柄を拘束されて、もはやこれまでかと思った時……」
「ここで美少女の登場だな」
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