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かわいい地質オタクの子とはすぐにお別れして、その後、俺が現れる前に生贄候補だったらしいアコという女の子と出会った。
このアコがまた、村一番の美少女だった。
こんな美女を死なせるなんてどうかしてる。美しいほうが神様が喜ぶというのは口実で、きっと嫉妬からの処刑なのだろうと俺は思った。
だって全てが平均点のこの俺が代わりでもいいくらいなんだから。
恐ろしい世界だ。
アコは俺を憐れんで慕ってくれて、かいがいしく世話をしてくれたんだけど……。
「この子がまた、なんていうか、ちょっとぬけてるっていうか……」
「美女で天然キャラ? めっちゃいいじゃん」
眞哉はいつの間にかふてくされている。
「いや、なんていうかここぞという時に失敗するタイプっていうか。最初の出会いは、俺をこっそり逃がしてくれるって言って夜に縄を解きに来たのに、力が弱くて全然縄がほどけなくて結局ただ来ただけで終わったり」
「かわいいけどイヤだな実際」
「俺に食事を運んでいたらうっかり躓いて全部ひっくり返したり、……そうだ、数学の問題集だって」
「それだ、問題集どうしたんだよ。つか、なんで異世界に持っていった?」
「転移する時に、たまたま手に持ってたんだよ。夏休み最後の日だったから、宿題を鞄に詰めて準備してたら、気づいたら辺りが野原になってて――」
俺はあの時の感覚を思い出して、思わず身震いした。
よく考えてみてほしい。一瞬前までいつもと変りない生活を送っていたのに、ふと顔を上げた時にその全てが消え去って知らない場所にいたら、どんな気持ちになるか。
夢とか幻とかを疑う前に、絶望した。ああ、終わった、と。
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