2人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
慣れ親しんだこの場所に名も知らぬ君とふたり
*****
今日もまた空がよく見える丘に来てしまう。
そこにはやっぱり彼がいた。
「あ、今日も来たんだ!」
笑顔で近づいてくる彼の名前を俺は知らない。
「ああ、今日もまた何かあったの?」
「今日は、みんなと喧嘩してもうた。嫌われたかも。」
嫌なことがあるといつも俺はここに来る。
すると必ず彼はいて俺の悩みを聞いてくれる。
「でもそんなところで終わるなら友達なんかじゃない。でも君はみんなを友達というんだろ?」
「うん」
「なら大丈夫だよ。きっとね」
そういい微笑む彼はすごく大人びて見えて、なんだかものすごく頼もしく感じた。
「ありがとう。仲直り頑張ってみる。」
「そうか。がんばれ。」
「ところで君の名前は?」
「そんなのいいじゃないか。さ、帰った帰った僕はもう少し残るけど君はもう帰らないといけない時間だろ?」
「え、あっ!じゃあまたな!」
「うん、じゃあね。」
やはり彼は名前を教えてくれない。
いつもごまかされてしまう。
それに、次会う約束もできない。
俺は帰った。
また会えるといいなと思いながら。
最初のコメントを投稿しよう!