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現場から回収してきた刃物をクルクルと手の中で弄びながら、男はワイドショーを見ていた。
「これは親父が首をくくるのも時間の問題かな?」
テレビに映し出された霧島ひかりの顔写真に男は語りかける。
「あんたの食べてたのは特性麻薬入りチョコだ。オタクの会社に清掃員として入り込んで5年間も情報を集め続けた水島律子が置いたもんだよ」
ククッと喉を鳴らして男は笑う。
「自分にかけた保険金が報酬だとさ。名前の通り律儀な依頼人だ。だがこんな金もらわなくても俺、今回の依頼だけは受けたんだぜ?」
霧島の豪邸を取り囲む執拗な記者たちの様子に男は微笑む。
「ほら、お忘れ物ですよっと」
男は霧島の働いた不正を、匿名でネット上に次々とアップしていく。
「親子共々、死んだ後までせいぜい砂かけられてろよ」
霧島に潰された零細企業リスト中には、男の父親が興した会社も名を連ねていた。
「やった方は忘れてても、やられた方は忘れやしねぇんだよ」
男はそう呟くと、タンッとエンターキーを押した。
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