60人が本棚に入れています
本棚に追加
バスと電車を乗り継いで職場についた。
朝から気分は最悪。それもこれもあのパスケースのせい。
「ああもう! 仕事しよ!」
こういう日には忙しいのがありがたい。
チョコレートを頬張りながら私は黙々と月末のデータ入力していく。
社内のメッセンジャーが手紙を配っている。私のデスクにも茶封筒が置かれた。
「なんだろう?」
切りのいいところまで入力を終え、パソコンから体を引き剥がして茶封筒に手を伸ばす。
「ヒッ!!」
思わず声が漏れた。
茶封筒から出てきたのは、朝自宅のメールボックスに置いてきたはずのパスケースだった。ハラリと落ちたクリーム色の付箋には『お忘れ物ですよ』と書かれている。
私はフロアを飛び出して封筒を持ってきたメッセンジャーを探す。だが行き交う人々の中にそれらしき姿は見つけられなかった。
最初のコメントを投稿しよう!