一日目

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 しかし今日は流石に疲れた。 私は電車に乗り込むと空席に腰を下ろす。  降車駅に近づき立ち上がると、不意に呼び止められた。 「お忘れ物ですよ」  振り向くと、私が今まで座っていた場所に黒いパスケースのようなものが落ちている。  車内はそこそこ混んでいて、次に座りたそうなサラリーマンが早く取れよと言わんばかりにこちらを見ている。  人の良さそうなご婦人は、私を見て微笑んだ。 「お忘れ物ですよ」  念押しするように言われては無視することもできない。私は手を伸ばして小さなをそっと手に取った。  目的駅に電車が滑り込む。 今更「私のじゃないです」というのも気が引けて、私は白髪のご婦人にペコリと会釈をすると電車を降りた。  仕方がない、面倒だがこの駅に届けていこう。そう気持ちを切り替えて改札口へと向かう。
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