一日目

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「お忘れ物ですよ」 コンコースを歩いていると、声をかけられた。 「えっ?」 思わず振り向けば、作業着を着た白髪の女性が立っている。  大きなマスクに三角巾、クリーンスタッフと思しきいでたちに少し警戒心を緩める。  女性はビニール袋に入った黒いパスケースを差し出してきた。 「あっ、それは……」 「お忘れ物ですよ」 強い口調に思わず私は眉をしかめる。 「私のものではありません」 すると意外にも女性は早口で言い返してきた。
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