61人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
最寄りのバス停についた。
私は足早に運転席の隣に設置された料金箱へと向かう。電子マネーで精算をしているとバスの後部から人が走ってきた。
「お忘れ物ですよ! あなたの座っていた座席に落ちてましたよ!」
薄暗いバスの中、渡されたそれはビニール袋に入った例のパスケース。
「いえ、これは……」
私のものではないと主張しようとしたらバスの運転手に睨まれた。
「早くしてくれますか?」
苛立ちを含んだ低い声にドキッとして思わずビニール袋を受け取りバスを降りた。
座席に押し込んでいるところを見られていたのかもしれない。と思えば、とっさに反論することもできなかった。
最初のコメントを投稿しよう!