お忘れ物ですよ

二日目

　翌朝、時間に余裕があった私は出勤前にメールボックスをチェックしてしまった。

「……何よ、これ……」
銀色のボックスを開くと、中からビニール袋に入った黒いパスケースが出てきた。

「誰よ！　こんなことするのは！」
思わず誰もいないエントランスで大声を出してしまう。

ふとクリーム色の付箋に気が付いた。
「お忘れ物ですよ。ゴミは指定のゴミ袋に入れてゴミの日に出しましょう」

「チッ！！」
マンションの住人に見られていたのかと、思わず舌打ちをする。

　こんなことで「ルールを守らない迷惑な住人」のレッテルを貼られるのは不本意だった。

「なんで私が……」
そう思いながらも私はパスケースをメールボックスに戻す。

「ゴミの日に出せばいいんでしょう？　ゴミの日に出せば！」