8.大好きな人

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「わかるだろ? トップモデルのほとんどがDom性なのと同じ。世の中、Domにはかっこいい役割を期待してんだよ」 「……」 「つまり、うちはおまえに期待してるってこと」 「……どうも」  どうせ半分は社交辞令だ。それ以上言い募ることは諦めて、軽く頷く。その肩を、ぽんと菅原が叩いた。 「じゃ、お疲れさん。残りもしっかりな」  がんばれよ、と言い置くと、そのままあっさりと離れていく。  出入り口でスタッフと談笑し始めた背中から視線を外して、片づけたばかりだったスマートフォンを準平は取り出した。休憩はまだあと少し残っている。    ――期待してるって言われるの、苦手なんだよな。  他意はないとわかっていても、Domなのだからと言われているようで、それがどうにも落ち着かない。  そう思ってしまう原因もわかっているのだけれど。  Domなのだから、それくらいできてあたりまえ。むしろ、Domなのに、なぜNormalの自分よりできないのか。宝の持ち腐れだよな、おまえのそれ。    それが、自分がDomと判明して以降の、兄の常套句だった。
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