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それもまた、いかにも彼らしい返事ではあった。
あの人の言う大丈夫ほど信用できないものはないとも思うけれど、それも含めて、らしいと言えばらしい。
――というか、このあいだも顔色悪かったもんな。
調子が悪そうだということは、すぐにわかった。
仕事も忙しい様子だったから、疲れが出ているのかもしれないと勝手に推測していたけれど、違う事情だったのかもしれない。
『調子悪いのって、もしかして俺のせい?』
そう入力して、けれど、送信する手前で準平は文章を取り消した。実際に自分のせいであろうがなかろうが、そんなことはないと否定されるに決まっている。
『わかった。お大事に。無理しないでね』
当たり障りのない文章を送って、返事が戻ってくる前にアプリを閉じる。深い溜息を吐いて、準平はぐしゃりと前髪をかき混ぜた。
……篤生くんの「大丈夫」、鵜呑みにしすぎてたな。
大丈夫ではなくても大丈夫と笑う人だと知っていたのに、「プロだから」、「気にしなくていい」と彼が与えてくれる理由に甘えすぎていた。
そういうところ駄目なのだと自分でも思う。わかっているのに、すぐに甘えてしまうし、受け入れてほしいと思ってしまうのだから、本当にどうしようもない。
そんなふうに思う資格も、本来ならないはずなのに。
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