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Subの考えることは、本当に理解できない。そんなことを、たぶん思っていた。
Normalだろうが、なんだろうが、自分を支配してくれるやつなら、それでいいのか。あんたを傷つけることしかしないやつなのに。
兄に対する苛立ちも一緒くたになっている自覚も、たぶんあった。今、傷つけているのは自分だろうということも。
薄暗い廊下にぺたりと座り込んだ篤生を見下ろしたまま、準平は繰り返した。
――そんなに兄貴がいいの?
篤生はなにも答えない。なんだかそれがどうしようもなく苛立って、その苛立ちのまま、コマンドを使うことを準平は選んだ。
そうすれば逆らえない、と。本能で知っていたのだと思う。
――なぁ、『言えよ、ぜんぶ』
苦しそうに篤生の喉が震える。それでもやめようと思うことはできなかった。
自分はDomなのだから、権利があると馬鹿なことを思っていたのだ。
Subを支配する権利。より強いDomがSubを奪う権利。そんなもの、あるはずがないのに。
――一夏が、……一夏が、いい。
一夏だったら、なんでもいい。絞り出された声は苦しそうだったのに、中学生だった自分の耳には、どうしようもなく甘く聞こえた。
同時に、最低なことをしていると準平は我に返った。パートナーでもなんでもない相手にコマンドを使って、心の中を暴こうとした。
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