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「影浦」
ぱっと振り返った篤生の視線を追って、準平も視線を向ける。近づいてきたのは、すらりとした背の高い男の人だった。
――区役所の人なんだろうけど、なんか、うちの同業っぽい人だな。
見た目もだけれど、いかにもDomという雰囲気が。菅原が言っていたとおりで、本当に業界人にはDomが多いのだ。そうして、つい、Domに対する若干の苦手意識から、交流を避けてしまっているのだけれど。
様子を窺うようにそっと見つめていると、篤生と話していた彼の視線がこちらを向く。
「もしかして、前に言ってた幼馴染みの子?」
「そうだけど、よくわかったな」
「いや、わかるだろ」
だって、と言いかけたところで口を噤まれて、準平は思わず篤さに目を向けた。その視線を受けて、篤生がかすかに眉を下げる。
「ごめんな、俺の同期なんだけど、前にちょっとだけ準のこと話したことがあって。それでわかったんだよな?」
後半は自分ではなく、同期という人に向いたものだったが、ひとまず準平は納得した。ぺこりと小さく頭を下げる。
「どうも、戸嶋です」
「戸嶋くんか。影浦です。秋原の幼馴染みなんだよね。大学生?」
「あ、はい。そうですけど……」
「けっこうよく会ってるの?」
「いや」
意図を掴みきれず、準平は曖昧に首を捻った。週に一度というのは、もしかすると多いのかもしれないが、あくまでもケアプレイをするための時間だった。
おまけに最近は少し間が空いている。頻繁というほどでもないだろう。頻繁に会いたい気持ちは、少なからず持っているけれど。
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