9.認めたくないもの

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「影浦」  ぱっと振り返った篤生の視線を追って、準平も視線を向ける。近づいてきたのは、すらりとした背の高い男の人だった。    ――区役所の人なんだろうけど、なんか、うちの同業っぽい人だな。  見た目もだけれど、いかにもDomという雰囲気が。菅原が言っていたとおりで、本当に業界人にはDomが多いのだ。そうして、つい、Domに対する若干の苦手意識から、交流を避けてしまっているのだけれど。  様子を窺うようにそっと見つめていると、篤生と話していた彼の視線がこちらを向く。 「もしかして、前に言ってた幼馴染みの子?」 「そうだけど、よくわかったな」 「いや、わかるだろ」  だって、と言いかけたところで口を噤まれて、準平は思わず篤さに目を向けた。その視線を受けて、篤生がかすかに眉を下げる。 「ごめんな、俺の同期なんだけど、前にちょっとだけ準のこと話したことがあって。それでわかったんだよな?」  後半は自分ではなく、同期という人に向いたものだったが、ひとまず準平は納得した。ぺこりと小さく頭を下げる。 「どうも、戸嶋です」 「戸嶋くんか。影浦です。秋原の幼馴染みなんだよね。大学生?」 「あ、はい。そうですけど……」 「けっこうよく会ってるの?」 「いや」  意図を掴みきれず、準平は曖昧に首を捻った。週に一度というのは、もしかすると多いのかもしれないが、あくまでもケアプレイをするための時間だった。  おまけに最近は少し間が空いている。頻繁というほどでもないだろう。頻繁に会いたい気持ちは、少なからず持っているけれど。
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