9.認めたくないもの

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「そんなにだと思いますけど」 「なんだ、そっか」 「影浦」 「いや、実は、昨日、こいつ倒れかけてさ」  え、という自分の声と、制止しようとする篤生の声が被った。倒れかけたという台詞に、篤生に向き直る。  気まずそうな表情が事実なのだと伝えてくるようで、恐る恐る準平は問いかけた。 「倒れかけたって、どうしたの?」 「あの、本当に、そんな大袈裟な話じゃないから。ほら、風邪気味って言っただろ。ちょっと調子悪くて、それで立ちくらみみたいになつただけで――」 「なに言ってんだ。サブドロップ一歩手前だっただろうが。すぐにケアできたから、『かけた』で済んだんだろ」 「影浦!」  らしくない篤生の声も、あまり耳に入ってこなかった。サブドロップ。ケア。その単語で頭がいっぱいになる。  なんでそんなことに、それで、誰が。ぐるぐるとそこまで考えてしまったところで、違う、と準平は我に返った。  違う、気にしないといけないのは、そこではない。  すっと息を吐いて、篤生に視線を向ける。 「大丈夫だったの?」  自分の声が、ふつうだったことにほっとした。けれど、それは篤生も同じだったのかもしれない。見上げてくる瞳が、柔らかく緩む。  
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