9.認めたくないもの

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「大丈夫だよ。でも、ありがとな」    また大丈夫と言わせてしまったな、と思ったものの、それ以上を確認することはしなかった。安心させるようにもう一度ほほえんで、篤生が同僚に向き直る。 「そういうことだから。大丈夫」  ちゃんと説明するし、と続いた台詞に、納得したふうに相手が頷いたことがわかった。肩を叩いて、じゃあ、とあっさりと帰っていく。  その背中を凝視してしまっていたことに気づいて、準平は視線を外した。凝視だけならまだしも、睨みそうになっていた気がしたのだ。  ――だから、嫌なんだ。  すぐに主張しそうになるDomの性が心の底から面倒くさい。 「ごめんな、準」 「あ、いや……」  申し訳なさそうな声に、準平は笑顔を取り繕った。気を悪くしたと思わせてしまったかもしれない。 「ぜんぜん。というか、こっちこそ、ごめん。その、……風邪気味って言ってたけど、そういうことなのかなって気になって」  そういうこと。言葉を濁した準平に、篤生が苦笑いを浮かべた。 「そっか、ごめんな」 「うん」 「本当にたいしたことなかったんだけど。……あいつが余計なこと言うから」  気にしたよな、と気遣われて、もう一度、うん、と頷く。  気にはした。篤生が想定しているだろうこと以外にも、きっと。けれど、その事実を知られたくはなかった。  なんでもない世間話の調子で、会話を続ける。
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