10.一歩ずつ、少しずつ

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「謝ってどうこうって問題じゃないけど、本当にごめん。……結局、昔からなにも変わってないな、俺」 「準」 「あ、……ごめん」  混じってしまった自嘲に、はっとしてもう一度謝る。言い訳をしたかったわけでも、甘えたかったわけでもないつもりだ。  じっとこちらを見つめていた篤生が、しかたないとほほえむ。 「それも含めて準のせいじゃないと俺は思ってるけど。でも、準が謝ったほうが区切りになってすっきりするなら、受け取る。いいよ、ぜんぜん」  この言い方はずるかったかな、と続いた台詞に、準平は首を横に振った。そのとおりだと少し恥ずかしくなった。  ――たしかに、俺が謝ってすっきりしたかっただけだな、これ。  彼が謝罪を求めているわけではない以上、本当に自分の勝手でしかない。でも。うつむきそうになった顔を上げて、改めて告げる。 「ありがと、聞いてくれて」 「うん」  柔らかく頷いて、篤生がマグカップに口をつけた。なんとなく、準平もそれに倣った。ふたりきりになって、どうしようと思っていたはずなのに、沈黙がまったく苦痛でなくて、不思議だな、と思う。  ――篤生くんだから、なんだろうな。  彼の持つ穏やかな空気のせいなのか、昔から妙な肩ひじを張らずに済んだのだ。そんな相手は、準平には篤生しかいなかった。
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