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「謝ってどうこうって問題じゃないけど、本当にごめん。……結局、昔からなにも変わってないな、俺」
「準」
「あ、……ごめん」
混じってしまった自嘲に、はっとしてもう一度謝る。言い訳をしたかったわけでも、甘えたかったわけでもないつもりだ。
じっとこちらを見つめていた篤生が、しかたないとほほえむ。
「それも含めて準のせいじゃないと俺は思ってるけど。でも、準が謝ったほうが区切りになってすっきりするなら、受け取る。いいよ、ぜんぜん」
この言い方はずるかったかな、と続いた台詞に、準平は首を横に振った。そのとおりだと少し恥ずかしくなった。
――たしかに、俺が謝ってすっきりしたかっただけだな、これ。
彼が謝罪を求めているわけではない以上、本当に自分の勝手でしかない。でも。うつむきそうになった顔を上げて、改めて告げる。
「ありがと、聞いてくれて」
「うん」
柔らかく頷いて、篤生がマグカップに口をつけた。なんとなく、準平もそれに倣った。ふたりきりになって、どうしようと思っていたはずなのに、沈黙がまったく苦痛でなくて、不思議だな、と思う。
――篤生くんだから、なんだろうな。
彼の持つ穏やかな空気のせいなのか、昔から妙な肩ひじを張らずに済んだのだ。そんな相手は、準平には篤生しかいなかった。
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