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「カウンセラーの先生?」
「そう。準もさ、数値高かったんなら、紹介されたんじゃない? 俺はべつに数値は低かったんだけど、Switchだったから、それで」
よくあることだというふうに続いた説明に、ああ、と準平は頷いた。
たしかに、検査のあとにそういった通知は来ていたし、何度か通った覚えもある。とは言え、なにか相談しようなどとは考えたことはなかった。
相談をしていたというのなら、篤生はそのカウンセラーとの相性もよかったのだろう。
――相談って、兄貴とのことだよな。
どんなことを話していたのだろう。知りたいような、知りたくないような。複雑な心境で次の言葉に迷っていると、篤生が先に口をひらいた。
「というか、準もおかしいって思ってただろ」
「……それは、まぁ」
「だろ? だから、距離を置くことにしたの。それだけ」
至極あっさりと笑って、でも、と彼が続ける。
「正解だったかなって思ってるよ。おかげで俺も今こうして落ち着いて働いてるわけだし、一夏もそうだろ?」
「まぁ……」
直接連絡を取ることはないが、母から聞く話ではなにひとつ問題なく幸せそうだ。不幸になってほしいと思っているわけでもないので、そのこと自体はべつにいいのだが。
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