10.一歩ずつ、少しずつ

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 ――そういえば、このあいだここで会ったときも、今日はやめとくって俺が言ってから、雰囲気が妙だったんだっけ。  自分が妙だったのが先か、彼が妙だったのが先か。思い出そうとしてみたものの、はっきりとはわからなかった。  帰ってから落ち着いて考えようと決めて、じゃあ、と準平は玄関に向かった。  あたりまえの顔で見送りに来てくれた篤生に、思い切って声をかける。 「あのさ」 「なに?」 「また、連絡してもいい? その、こういうプレイとかじゃなくても」  篤生はきっと断らない。そうわかっていても緊張してしまって、相談にもまた乗ってもらいたいし、と口早に準平は言い足した。  本当に、びっくりするくらいかっこよくきまらない。そっと溜息を呑み込んで、俯きかけていた視線を上げる。目が合うと、にこりと篤生が笑みを浮かべた。その笑顔がうれしそうに見えて、準平は心底ほっとした。 「もちろんいいよ。病院のこととか、俺もちゃんと聞きたいし、いつでも連絡して」 「……うん」 「それ以外でも。せっかく会えたんだから、いつでも、準のいいときに連絡して。待ってる」  弟のような幼馴染みに対するものだとわかっていても、縁が途切れなかったことがうれしくて、準平は最後にもう一度「ありがとう」と繰り返した。  
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