11.前進

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『今回も簡単なプレイもしたけど、大丈夫だったよ』 『おかげで、落ち着いてる感じも続いてるし。本当に、あんまり気にしないで』  今は篤生は仕事中だろうから、すぐに既読にはならないだろう。  残業のときは見ることもあるけれど、就業中は基本的に自分のスマホには触らないかな、と言っていたのは篤生で、その話を聞いたとき、らしいなぁ、と納得したのだ。  生活時間帯も違うのだから、送ったらすぐに見てほしいなんてことも思わない。篤生も仕事が終わったあとに「大丈夫」というメッセージを見たら、それで安心するだろう。  スマホを閉じて、はぁ、と準平は溜息を吐いた。そのままずるりと背もたれにもたれかかる。  ――菅原さんにも、ふつうDomはそんなに嫌がらないだろって言われたし、それも、まぁ、そうだろうなって思うんだけど。でも、なんか、やっぱりすごい苦手意識あるんだよな。  医療的な行為だと割り切ればいいのに、それすらもうまくできない。まぁ、でも、と、自分を鼓舞するように準平は思い直した。受けるようになっただけ、少しは前進しているのだろう。  なにもやらなかった以前に比べたら、身体的にマシなことも事実だ。だから、それで、いい。あれ以上、あの人に迷惑をかけるよりは。
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