12.自覚

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「まだ大学生なんだから。余計な気遣いさせるようなこと、言わないでやってくれる?」 「余計な気遣いって、事実だろ」 「事実だからって、ぜんぶをぜんぶ言う必要はないだろって言ってんの」 「まぁ、おまえはそういうタイプだよな」  こちらの言いたいことをわかっているだろうに、気にしたふうでもなく影浦は笑うばかりだ。表情が見えないことをいいことに、軽く眉をひそめる。  ついでに、無言のままキャビネットの中身を整えていると、学生だったけど、と影浦が言う。 「ん?」 「いや、学生だっていうのは聞いたし、おまえがベタかわいがりしてんのもわかったんだけど、めったと見ないレベルのDomだったもんで、つい」 「……」 「というか、おまえさぁ、好き合った正式なパートナーなんですっていうならあれだけど、あのレベルは病院でちゃんと診てもらえ」  それは、自分が以前に軽く相談した内容にかかっているのだろう。そうわかったから、篤生は苦笑を返した。 「昔から強いんだ、あの子」 「だから、見たらわかるって、それは。あのレベルは、なかなかいない」  ファイルの順番を正しながら、うん、と頷く。 「病院に苦手意識も持ってたみたいなんだけど、でも、ちゃんと行くって言ってたから」 「へぇ」 「だから、大丈夫。ちゃんと自分で決めてた。えらいよ、本当。けっこう嫌がってたから、俺も心配してたんだけど」  そう。準平は、きちんとひとりで決めていた。自分のおかげだと言ってくれていたけれど、そんなことはないことは、篤生自身が一番よくわかっている。  自分は、準平に、結局なにもできていない。
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