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「怖いって思うってことは、一回やらかしてるケースが多いんだよ、結局」
「……」
「それで、自分が怖くなる」
――怖くなる、か。
篤生はSwitchだ。そうでなくとも専門家の端くれのつもりでいるし、Domの心情もわかるつもりでいる。でも――。
「まぁ、まともにカウンセリング受けたら済む話だけどな」
「準が」
「ん?」
「あぁ、いや、その、幼馴染みが、はじめて接したSubがろくでもなかったってだけだよ。準のせいじゃない」
影浦の言うように「やらかした」わけではない。間を持たせるように手に取ったファイルを繰りながら、篤生は弁明した。
あれは、本当に、あの子のせいではない。どちらかと言わなくとも、問題は自分の側にあって、それに巻き込んでしまったというだけだ。
「はじめて接したSubって。中学生か、高校生くらいのときの話だろ」
「まぁ、……そうだけど」
「おまえもわかってると思うけど、その時期なら、よくある話だ。むしろ、その年ごろで、それなりの数値のダイナミクスがあって、三百六十五日二十四時間まともなほうがどうかしてる」
らしい言いように、篤生は小さく笑った。
「影浦もあった?」
「大ごとになるようなことしてたら、この仕事に就けてない。ただ、数値の高いDomだったら、多かれ少なかれ経験はある。そういうこと」
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