12.自覚

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 そういうこと、か。  きっと、そうなんだろうな、とシンプルに篤生は納得した。自分だって、似たようなものだったからだ。  やらかして、どうにか専門家の手を借りて、立ち直った。よくある話。  ――準は、カウンセラーと相性が悪かったのかもしれないな。  あの病院嫌いは、はじめて接した専門家の印象に左右されている部分が大きい気がするのだ。  幸い、自分は、はじめに紹介された先生との相性が良かったけれど、そうでないということもよく聞く話だ。  相性の良い先生を求めて自分から行動をする人もいれば、諦めて頼ることをやめるタイプもいる。  準平は後者だったのかもしれない。  ――今度、聞いてみようかな。いや、でも、お節介が過ぎるか。  悶々としそうになった思考に蓋をして、そうだよな、と三度同じ相槌を篤生は繰り返した。  ファイルを戻して、キャビネットの扉を閉める。 「そうだろ。それで、大ごとになるかどうかの一線を越えるかどうかは、本当に運だと俺は思う」 「……そうかもな」  たぶん、それも本当にそうだ。「事故」を防ぐべき立場の人間としては、肯定しにくいものではあるけれど。  どうにか苦笑を浮かべて、篤生は自分の席に戻った。
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