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「その病院行く云々にしても、向こうにしたら、気ぃ使って考えたんだろうに」
それなのに、と言わんばかりの調子に、もう一度苦笑を浮かべた。そのままパソコンを起動する。
――まぁ、ある意味で、気は使ったんだろうな。本当に。
そんなことをさせるつもりはなかったのだけれど、こうなってしまった以上は、言ってもしかたのないことだ。
「まだ学生なんだろ」
なにも言わなかったことへの当て付けか、揶揄するように自分の使った台詞を返されてしまった。
「言わない部分もぜんぶ察しろ、なんて無理な話だろ。する気があるなら、そこはおまえがコントロールしてやれよ」
「べつに、それも、そんなふうに思ってたわけじゃないけど。――あ、おはよう、野沢さん」
「おはようございます。あれ、秋原さんはともかく、影浦さんが早いの珍しくないですか? あ、わかった。今日、飲み会なんでしょ」
「そういうおまえは、基本定時で帰ってるだろうが」
「だって、残業したくないですもん。課長も無駄な残業はするなって仰ってますし」
いくら残業代が出るって言っても嫌ですよ、面倒ですもん、とあっけらかんと言ってのけた野沢に、影浦の纏う空気の苛立ち度合いが一段とアップした。
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