12.自覚

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 まぁ、でも、これからは、準が言わない限りは、話に出さないようにすればいいか。  そう篤生は思い決めた。ありがたいことに、また会いたいと言ってくれているのだから、お節介になり過ぎないように気をつけて、ひさしぶりに会った年上の幼馴染みとして、適切な距離を保てばいい。    ――でも、そうだよな。そうしていけば、大丈夫。  症状の経過だけは、関わった者の責任として尋ねておこうと思うけれど、それ以外の連絡は控えめにしよう。建設的にこれからのことをイメージすることができたことに安堵して、篤生は仕事に意識を向け直した。    **  ――あ、準かな。  帰宅途中の電車の中、メッセージの通知を伝える振動に、半ば反射でその名前が浮かんだ。  自分から「病院はどうだった?」と尋ねるメッセージを送っていたということもあったけれど、最近では一番やりとりをしている相手だったからだ。  アプリを起動して、新着のメッセージを確認する。けれど、未読のものは見当たらず、あれ、と篤生は首をひねった。なにか違う通知だっただろうか。 「……あ」  ショートメール。予想していなかった新着通知に、小さな声がこぼれる。迷惑メールだろうなと思いながらも、念のために確認をすることにした。  電話番号しか知らない相手から、以前に数度、ショートメールを用いて連絡が届いたことがあったからだ。SNSもやっていないし、メッセージアプリのほうも電話番号などで検索できないように設定しているので、かつての地元の友人からすると、自分は「連絡の取れないレアなキャラ」になっているらしい。
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