12.自覚

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『大丈夫』  誘ってくれてうれしい。一夏のほうだから忙しいだろうから、候補日を教えてくれたらこっちで調整する。端的に返信をして、今度こそスマホを閉じる。電車は、もうまもなく最寄駅に着こうとしていた。  ――なぁ、篤生。駄目?  あの顔で、あの声で、そう乞われると、なんでも受け入れてやりたくなった。好きだったからだ。それはおかしいと言われて、実際に離れてみて、あぁ、たしかに、そうだった、と自覚もしたけれど。  それでも、あのころの自分にとっては、受け入れることがあたりまえの行為だった。  ――じゃあ、今のこれは、なんでなんだろ。  一夏のことは、もちろん、今も嫌いではない。別離の期間を経て、あのころ抱いていたような恋愛感情はなくなったけれど、大事な幼馴染みだと本心で思っているつもりだ。  会うことが怖い、だとか、そういうこととは別次元で、そうであるつもりだ。おかしくさせたのは、自分だとも思っている。  ――尽くしたい、のかな。それとも、あのころの名残なのかな。  そうだとしたら、あまりに成長していなくて笑えない。けれど、あのころとはもう違うのだと自分自身に思い知らせる良い機会なのかもしれない。夜の道を歩きながら、篤生はそう思った。  一夏のSubでいたいと願っていた自分とは、決別したのだから。
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