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――撮影か。
中途半端にいろいろと見たせいか、押し込んだつもりの「見たいな」という欲求が、むくむくと湧いてきてしまった。
身内に見せたくないという気持ちもわかるので我慢していたけれど、身内だから見ることができないというのも、なんだかちょっとせつない。
ひとりごと半分といった調子で、ぽつりと篤生は呟いた。
「ちょっと見たいな」
「やだよ。というか、もう見たんでしょ、どれか知らないけど」
またしてもあっさりと振られてしまった。
「いや、でも、見たけど。本当たまたまっていうか。俺が探したわけでもないし」
「たまたま?」
「後輩のスマホの画面が見えたっていうか。あ、その後輩、準が推しなんだって」
「えぇ、それはありがたいけど。後輩って女の人?」
「うん、そうだけど」
「どんなタイミングで相手のスマホ見えるの。距離近すぎじゃない? セクハラ?」
「違うから!」
とんでもない疑惑に、慌てて頭を振る。どこでも言われたくはないが、いつ職員が出てくるかわからないところでは本当に言われたくない台詞だ。
「電車に乗ってて、揺れたんだよ。それだけ」
「どっちにしろ近くない?」
なんとも言えない表情で苦笑した準平が、スマホ出して、と言うので、篤生は素直に取り出した。なんだろうと思っていると、ふいに手元が陰った。
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