4.酒は飲んでも吞まれるな

2/5
前へ
/145ページ
次へ
 ――いや、本当、まさかとは思うし、大丈夫だとは思うんだけど。……うん、たぶん。  そこまで自分の理性がクズだったとは考えたくないし、かっこよくなったなぁ、と思っているけれど、あくまでも「客観的に見て」というやつであって、好みだなんだという見方をしたことはないはずだ。……たぶん。  どうにかそう言い聞かせた篤生は、改めて寝顔を見つめた。起きているときより幼さが強くて、変な意味でなく純粋にかわいい。ふっと目元をゆるめる。 「……似てないよな、やっぱ」  パーツだけを見ると似ている気もするけれど、一夏と準平は纏う雰囲気が昔からまったく違う。  じっと眺めていると、また手の中でアラームが鳴った。あ、と停止させたものの、さすがに三度目はうるさかったらしい。もぞりと準平が身じろいだ。 「あ、……おはよ」  寝起きの顔と目が合って、とりあえずと笑いかける。ぼうっとこちらを見ていた準平が、「あぁ」と小さく呟いた。  自分と違って、しっかりと記憶は残っているみたいだった。いや、まぁ、それがあたりまえではあるのだろうけれど。 「おはよ」  肘をついて軽く身を起こした準平が、スマートフォンを覗き込んでくる。 「何時?」 「え……、あぁ、七時。ごめんな、起こして」 「いや、いいけど」  覚えていないことをどう誤魔化そうかと考えているうちに、妙な間が生じてしまった。やばい。黙り込むと、準平の視線が持ち上がった。ほんの少し呆れたようなそれに、知らず汗がにじむ。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

217人が本棚に入れています
本棚に追加