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「篤生くん、もしかして覚えてない?」
「え……、いや、えっと」
「言っとくけど、篤生くんが一緒にベッドで寝よって言って離さなかったんだからね」
「へ、へぇ……」
「へぇって」
ぎこちなくほほえむと、瞳に浮かぶ呆れが強くなった。
「本当に覚えてないんだ。酒癖悪っていうか、怖」
怖いと言われてしまったものの、自分でも自分が怖いくらいだったので、なにも言い返せない。誰だ。記憶を飛ばしたことはないなんて言ったの。いや、俺だけど。
「……いや」
頭の重たさから考えても、それなり以上に呑んだことは間違いないのだろうし、なんだかすごくふわふわと楽しい気分だった記憶もある。
もし仮に家まで送ってもらったのだとしたら、泊っていけと引き留めただろうし、ソファーなんてものはないので、ベッドで寝ようと言っただろうなぁと思う。冬だし。寒いし。
そこまで考えたところで、恐る恐る切り出す。
「あの、……俺、その」
「なに、篤生くん」
言い淀んでいると、ふっと笑われてしまった。
「俺も篤生くんも男同士なんだし。そんな青い顔しなくても」
「あ、……うん。そうだよな」
男同士。なにもあるわけがない。ごく当然といった反応に、どうにか篤生は頷いた。
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