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――でも、そうだよな。それがふつうの反応だよな。
いちいち過剰に反応する自分が、少しおかしいのだ。溜息を呑み込んだ篤生をよそに、起き上がった準平がベッドから足を下ろした。そのまま迷いなく脱ぎ捨てていたらしい服を拾い上げている。
見覚えのありすぎるスウェットに、たぶん、それも自分が押しつけたんだろうなぁ、と篤生は思った。
……なんか、怖いくらい記憶にないな、本当。
聞くのも怖いが、聞かないままにしておくことも恐ろしい気がする。動く気にもならないままぼうっとしていると、着替え終わった準平がくるりと振り返った。きっちりとコートも着込んで、いつものキャップを被っている。
「俺、今日朝一でゼミあるから帰るね」
「え? あ、もう帰る?」
「うん。っていうか、篤生くんも仕事でしょ。時間大丈夫?」
「あ、うん」
大丈夫、と半ば反射で応じて、慌てて篤生も立ち上がった。
「あの……、ごめんな? その、迷惑かけて」
「それはぜんぜんいいけど。べつに迷惑ではなかったし」
靴を履いた準平が、苦笑って顔を上げる。
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