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「あれ、秋原さん、来るの早。まだ昼休みじゃないですか。しかももう仕事してるし」
「野沢さん」
「おつかれさまでーす。あ、そうだ。十三時になったら言おうと思ってたんですけど、電話来てましたよ、近藤さんから」
隣の席に座った野沢が、マグカップに粉末のフレーバーティーを入れながら話を続ける。
「こっちで話したいって言ってたから、十四時に面談室取ったんですけど、大丈夫でした? 一応、秋原さんのスケジュール確認したんですけど」
「大丈夫、ありがとう。電話ではなにかおっしゃってた?」
「いやぁ、そこまで大丈夫そうでしたよ。というか、本当に参ってたら、あの人、家まで来いって言うじゃないですか」
あいかわらずのあっけらかんとした返答に、苦笑を返す。まぁ、たしかに、そのとおりではあるのだけれど。
「じゃあ、野沢さんも入ってくれるんでよかった? 金曜までの決裁のほうは大丈夫そう?」
「あ、大丈夫です、残業しなくてもいけるはずなんで。というか残業とか無理なんで、なんとかしまーす」
「わかった。じゃあ、よろしくね」
面談室に入るときや自宅訪問をするときは、原則として職員ふたりで対応することになっているのだ。十三時までは休憩時間とばかりにスマートフォンを触り始めた野沢から、ファイルに視線を戻す。
やりとりを聞いていたらしい影浦が嫌そうに顔をゆがめていたことは、気がつかないことにした。水と油とまでは言わないものの、たしかにこのふたりは馬が合っていない。
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