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――どっちもマイペースっていうか、我が強いからなんだろうなぁ、たぶん。
ついつい空気を読みたくなる自分からすると、ちょっと羨ましいくらいだ。鳴り響いた十三時のチャイムに、野沢がスマートフォンをさっと卓上に伏せる。
パソコンのスリープモードを解除して、さくさくとメールチェックをやり始めたので、篤生もファイルを机の脇に積んだ。
――野沢さんにも思うところはあるとは思うけど、それでも、このくらいしっかり割り切れたら、近藤さんも楽だろうにな。まぁ、それができたら苦労してないだろうけど。
支援者に対して言えるわけのないことを頭の片隅で考えつつ、鳴った電話に手を伸ばした。
*
「毎回似たような話ばかりお聞かせして、すみません。でも、来週は、時田さんのところに行ってみようかなって、ちょっと考えてます」
面談終盤の雑談の中で出た就労支援の担当者の名前に、いいですね、と笑顔で篤生は頷いた。
はじめてケースを受け持った四年前は、そのときのパートナーの好みだったらしく派手な格好をしていたけれど、今の彼女は髪型も服装も随分と落ち着いている。見た目がすべてとは言わないものの、面接の受けが良いことに違いはないだろう。
「こちらから連絡取っておきましょうか? この日がいいとかあります?」
「大丈夫です。ちゃんと自分で連絡入れますから」
安心してください、と笑って、近藤が頭を下げた。
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