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「それって……」
「ん?」
「秋原さんのこと言ってます?」
「え?」
予想の斜め上を突き抜けた反応に、つい素で返してしまった。「は?」と言わなかっただけ、良しとしてほしい。
「あ、違うならあれなんですけどぉ」
けらけらと笑いながら、「それに、最近、秋原さん機嫌良いし」と野沢が言う。
「いや、まぁ、べつに、ふだんも悪くはないですけど。余計にっていうか。あと、このあいだ急に残業やめて帰ったって聞いたから。らしくないなーって」
「……誰から?」
「笹井さんです。絶対彼女だよ、どんな子なのかなぁって言ってましたよ」
「……」
「あの人、若い人の噂話、大好きじゃないですか。秋原さん迂闊すぎ」
たしかにそういう人なので、返す言葉がなかった。悪い人ではない。ないのだけれど、本当にその手の話が大好きな人なので。
再び黙り込んだ篤生に、「それとも」ととどめのように野沢が目を輝かせた。
「そういうこと、頭から飛んじゃうような相手だったんですか?」
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