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――そういうつもりじゃ、本当にないつもりだったんだけどな。
つもり、つもり、と言っている時点で、信憑性がないことは重々承知しているが。自室で見るともなしにスマートフォンの画面をスクロールしながら、はぁ、と溜息を吐く。
認めたくはない。けれど、言い逃れのできないカードが揃ってしまっていることは、事実なのだった。
――いや、でも、残業は、あの日になにがなんでもっていうやつじゃなかったから、準を優先したってだけだし。
機嫌も、まぁ、もしかしたら良かったのかもしれないが、ひさしぶりに会った幼馴染みとの交流を楽しんでいるだけなのだから、べつにおかしいことではないだろう。
検査の結果も、一応は許容の範囲内だった。
だから、と言い訳を重ねかけたところで、篤生は諦めた。なんだか少し馬鹿らしくなったのだ。いったい誰に自分は言い訳をしているつもりなのか。
テーブルに肘をついたまま、伸びてきた前髪をくしゃりと掻き上げる。
「……ふつうだったら、さすがにあの酔い方はしないよな」
それに、自分の体調は自分が一番よくわかっている。だから。
――話さないとな、そろそろ、ちゃんと。本当に。
もうひとつ溜息をついたところで、ラインの通知が光った。ぱっと意識がスマートフォンに向く。
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