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「やっぱり、今日は帰るよ、俺」
「え……」
「篤生くんのおかげで、会ったころに比べたら、本当に良くなってるし。また来週で大丈夫」
だから、気にしないでゆっくりして、と準平がほほえむ。
自分を気遣ってくれた上での好意だとわかるし、「本当に良くなってる」ことも事実だろうと知っている。それなのに。
「……そっか」
「どうかした?」
マイナスな感情が、言葉にまでにじんでいたのかもしれない。打ち消そうと、篤生は表情を取り繕った。
「それならよかったなって思っただけ。じゃあ、そろそろ病院に切り替えてもいいかもな」
もともと、言おうと思っていたことではあった。
お役御免だなんていうふうには受け取らず、さらに良い方向に進ませることができるよう、背中を押す。最初から考えていたことなのに、いざ、自分のサポートはもういらないのだとわかると、心が重くなってしまう。
――だから、Subは嫌なんだ。
すぐにDomに依存して、自分の存在意義を押しつけようとする。自己嫌悪を押さえ込んで、篤生は笑いかけた。仕事のときと同じ、なんでもない調子で。
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