6.秘密

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「このあいだも思ったんだけど」  このあいだって、いったいいつのことだろう。そんなことを思いながら、うん、と頷く。  心当たりが多すぎて、自分でもよくわからなかったのだ。けれど、たぶん、最近の自分は、この家でまともな顔をしていない。 「調子悪そうっていうか、なんか、空元気って感じすごいけど」 「……うん」 「大丈夫? 家、帰ったら?」 「いや、……」  去年くらいからもうずっとぶっきらぼうだった準平が、心配して話しかけてくれている。そう思うと、「大丈夫」と笑うことはできなかった。  ぎゅっとコップを持つ指先に力が入って、それを見た準平が、「兄貴?」と言う。 「いや、一夏がどうっていう話じゃなくて、その」 「だって、いっつも兄貴に気ぃ遣ってんじゃん、なんでそこまでってくらい」    なんでそこまで、と言われても、返す言葉はなかった。せっかく喋りかけてくれたのに、苛立たせてしまった、と。申し訳なく思いながら、そうかな、と篤生は曖昧にほほえんだ。 「そうでしかないと思うんだけど。っつか、見てるこっちが腹立つ。ふつうに気分悪い。なんで、ああなわけ? おかしいだろ」  吐き捨てられた瞬間、ぞくりとした感覚に襲われた。指先が震えて、コップがカウンターに当たる小さな音が小刻みに響く。Domの圧だ、と遅れて気がついた。
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