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自分たちのやりとりをどんな顔で準平は見ていたのだろう。確認することが恐ろしくて、一夏を見たまま、篤生は続けた。
「そんな言い方しなくても」
「そんな言い方って、なに?」
控えめに嗜めただけだったのに、一夏の声音の奥が険しくなる。腕を掴んでいた手に力がこもったことがわかると、ぐっと心が重くなった。
余計なことだと知っている。でも、弟に対する一夏の態度は年々きつくなっていて、放っておけなかったのだ。
一夏のことは好きだ。ただ、それとは別の次元で、篤生は準平のことが好きだし、かわいかった。
「だって、……っ」
かわいそうだろ、と言おうとした台詞は言葉にならなかった。
「篤生?」
訝しげな呼びかけに応えることもできなくて、目の前の身体に縋る。止まったはずの震えが、また生じはじめていた。
その反応で理由を察したらしい一夏が、あぁと頷く。
「ごめんな、準平。兄ちゃんNormalだから。おまえにどれだけ威圧されても、ぜんぜんなにも感じないの」
でも、と。宥めるように自分の背中を撫でながら、笑う。
「俺のSubがきつそうだから、やめてやってくれる?」
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