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俺のSubという言葉に、身体の芯はたしかに熱くなったのに、胸のどこかは冷たかった。
望むことを叶えて、褒めてもらえたらうれしい。一夏のSubになりたい。どれも、本当に思っている。でも。
……準に言いたいだけだろ、これは。
自分のために使われている言葉ではない。それで、それは、今に限ったことではなかった。
気づきたくないから、気づかないふりをしていた。けれど、本当はずっと自分は知っていたのかもしれない。
「……っ、」
ぎゅっと指先に力が入る。
心も身体もぐちゃぐちゃで、自分のもののはずなのに、なにひとつ自分のものではないみたいだった。
呼吸がどんどん浅く忙しなくなっていく。怖い。寒い。
――サブドロップって、こんな感じなのかな。
一夏はDomではない。でも、自分にとって、大好きで、役に立ちたい相手だったから。でも、その相手に愛されていないから。
バタンと勢いよく扉が閉まった音で、篤生ははっと我に返った。ぽたりと汗が落ちる。
準平の姿は、もうどこにもなかった。家の外に出て行ったのか、玄関の扉が閉まる音がする。
ずるずると篤生がフローリングに座り込んでも、もう一夏は支えようともしなかった。ただ楽しそうに笑っている。
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