6.秘密

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「なぁ、見た? あの顔」 「……一夏」 「あいつ、おまえのこと好きだよな。まぁ、本当、昔からだけど」  一夏、と震える声で篤生は繰り返した。なんだか、本当によくわからなかった。なにをやっているのだろう。なにも関係のない準平に、嫌な思いまでさせて。 「なに、さっきから」 「なに、じゃなくて。なんで、そんな言い方するんだよ。準はなにも悪くないだろ」  自分を心配してくれただけで、出て行ったことも、それがベストだと考えてしてくれたというだけのことだ。  それなのにという申し訳なさと、羞恥と、一夏に対する苛立ち。そういったものがにじんだ声になった。  責めていると取ったのか、一夏の声のトーンが下がる。 「篤生」  ふたりきりのときにだけ聞くそれに、びくりと肩が揺れそうになる。 「おまえ、俺のじゃなかったんだ」 「え……」 「なに、違うの?」  冷たい瞳に見下ろされて、反射で首を横に振れば、一夏が馬鹿にしたように笑った。 「じゃあ、なんで、俺よりあいつの肩持つわけ?」 「っ、だって……」 「だって、なんだよ」  だって、今のはどう考えても一夏が悪いだろう。そう答えればいいだけなのに、言葉にならなかった。   「なぁ、篤生。なに?」  おかしいとわかっている。でも、どうしても抗えなかった。一夏はDomではない。ならば、これはいったいなんの本能だというのだろう。
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