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7.変わりゆくもの
昔の夢を見るときは、決まっていつも寝覚めが悪い。
そうして、そういう夢を見るときは、自分のメンタルが絶不調で、かつ、ダイナミクスが乱れているときなのだ。
「……最悪」
ぽつりと呟いて、篤生はベッドの中でスマートフォンに手を伸ばした。午前五時にもなっていない時間だったが、すっかりと目は冴えてしまっている。
――それに、もう一度寝たくはないな。
そんなことをすれば、ろくでもない続きを見てしまいそうだった。何度か無意味に寝返りを打ってみたものの、諦めて起き上がる。
寝巻きのスウェットの上にカーディガンを羽織って、部屋の電気をつけた。
どうせ、あと二時間もしないうちに起きるのだ。四時間眠っていれば、今日一日くらいどうとでもなるだろう。
そう決めて、電気ケトルでお湯を沸かす。静かな部屋に響くケトルの音をぼんやりと聞きながら、篤生はひとつ息を吐いた。
トラウマだのなんだの、と。被害者ぶったことを言うつもりはいっさいない。どちらかと言わなくとも、ああいうものは黒歴史というのだ。
――まぁ、子どもだったんだよな、本当。
自分も、一夏も。
専門福祉士としての資格を取る過程で、思春期の子どもにそういった「事故」はつきものだと篤生は知った。
ダイナミクスの値が高ければ高いほど、珍しいことではない、と、そう。
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