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『今度の金曜、どうする? 来るでよかった?』
『返事遅くなって、ごめん。ちょっとモデルのほうの仕事入っちゃって。終わるのいつになるかわからないし、やめとくね。ありがとう』
二日前、精いっぱいのなんでもない調子で送ったメッセージに、ようやく既読がついたと思ったら、これである。
始業前の区役所のデスクで、篤生は深々と溜息を吐いた。自分のほかに誰もいないことをいいことに、その調子のままぽつりとひとりごちる。
「……大丈夫って聞くのは、まずいよな」
むしろ、衝動のままに返していいのなら、体調も確認したいし、来ないなら来ないでいいけれど、病院に行く気はあるのかということも確認したいくらいだ。
はぁ、ともう一度溜息を吐いて、アプリの画面を凝視する。
――なんか、どう返せばいいんだろ。
自分のことは気にしなくていいと改めて主張することも、直接会わないままメッセージで「ごめん」と伝えることも、なんだか少し違う気がする。
――準に、変な罪悪感だけは持たせたくないんだけどな。
だって、そんなもの、持つ必要はないのだから。何度目かの溜息をこぼした瞬間、肩にぽんと手を置かれて、篤生はスマートフォンを取り落とした。
ガタンと鳴った物音に我に返って、振り仰ぐ。
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