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「あぁ、うん」
気にかけてくれてたんだ、と頷く。その話をしたのは、もう一ヶ月ほど前になるのだろうか。
進展があったどころか、悪化している気もするのだが。そんなことは言えるわけもなく、なんでもないふうに篤生は笑った。
「まぁ、ちょっとずつかな。無理して急いてもしかたないし」
「それは、まぁ、そうだな」
「うん。プライベートだし。気長にゆっくりでいいかなって。――あ、そうだ。主任には言ったんだけど」
「ん?」
「影浦に直接迷惑はかけないと思うけど、俺、しばらくSubやらないから」
先ほどと同じなんでもない調子で告げて、よろしく、で話を打ち切る。
――そういや、第四半期の目標、まだもらってなかったな。
野沢が来たら確認しておこう。そう決めて、先に入力できるところを埋めていくつもりだったのだが。もの言いたげな視線に負けて、篤生はパソコンの画面から向かいの席へと視線を移した。
理由を言われないと気になる気持ちもわかるからだ。ダイナミクスに関することは、なかなか質問がしづらいということも。
「べつに、たいしたことじゃないよ。検査も問題はなかったんだけど、でも、ちょっと、バランス崩れ気味だから様子見ね、とは言われてて。念のため」
Subとして関わるケースが手持ちにないから、ちょうどいいかなって、と、そう。あながち嘘ではないことを、篤生は言った。
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