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「影浦も、ちょっと気にしてくれてただろ。だから、調整効くうちに調整しとこうかなって」
「調整って、……そりゃ、できるなら、なによりだけど。というか、そういうことってあるもんなの? 俺、おまえ以外にSwitchってあんまり知らないんだけど」
「どうだろ、人に寄ると思うけど。俺もあんまりはないけど、はじめてってわけじゃないよ」
だから、大丈夫、と請け負う。
――それに、大丈夫にしないとしょうがないしなぁ。
そもそも、仕事のほうに影響を出すつもりも、本当はなかったのだ。ただ、さすがに今のこの状態でやって、万が一「なにか」があったら、相手に申し訳が立たない。そう判断して、申告したのだ。
その判断ができた時点で、まともだと篤生は自負している。
「なら、いいけど。じゃあ、まぁ、お大事に」
「そうする、ありがと」
早いうちに戻すよ、と笑って、パソコンに向き直る。入力を再開すると、向かいの席からもすぐにキーボードを打つ音が響き始めた。
ほっとして、すっかり温くなってしまったコーヒーに口をつける。惰性で入れて飲むことを忘れていたのだ。ズキンと痛むこめかみに、軽く目を閉じる。
――最近、あんま寝れてないからだろうな。
けれど、気にしなければ、そのうちなくなるだろう。そういうものだと経験則で篤生は知っている。
記憶も、悪夢も、時間が経つにつれ、少しずつ抜け落ちて、大丈夫なようになる。そういうものなのだ。
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