7.変わりゆくもの

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「あ、秋原さん。このあいだ言ってた第四四半期の目標、メールで送っといたんで、また確認してもらっていいですか?」  窓口を終えて席に戻ったところに声をかけられて、篤生は笑顔を向けた。 「ありがと、野沢さん」 「いえいえ、こちらこそ遅くなってすみません。すっかり忘れてました……、と、秋原さん、なんか顔、青くないです?」  大丈夫ですか、と小声で問いかけられて、受付票を机に置きながら、首をひねる。  気にしてくれること自体はありがたいが、そんな自覚はなかったのだ。 「そうかな。大丈夫だよ」 「そうですか?」 「あー……、じゃあ、偏頭痛かな。そこまで酷いわけじゃないんだけど」 「偏頭痛きついですよね、私も頭痛持ちなんで気持ちめっちゃわかります。薬持ってますけど、要ります?」  食い下がられて、らしいことを言っただけだったのに、いたく共感されてしまった。  悪いことをした気分で、ありがとう、と断り文句を告げようとした瞬間、窓口のほうで少し大きな声が響いた。 「え? なに、またDom?」  嫌そうな野沢の問いかけに半ば反射で頷いて、窓口に視線を向ける。先ほど自分の隣で受付をしていた美園が担当していたのは、Domの男性だったはずだ。
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