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三度目の溜息を呑み込んで、どうにか取り繕った返信を打とうとした、まさにそのとき。準、と声をかけられて、ぱっと準平はスマートフォンを伏せた。
その挙動に、近づいてきたマネージャーの菅原が思いきり怪訝そうな顔をする。
「暗い顔してると思ったら、なんだよ、おまえ。女か? 隠すなよ、気になるだろ」
「いや、べつに、そういうんじゃないですけど」
「なら、なんだよ。それこそ、べつにいいけど。頼むから、変な遊びしてすっぱ抜かれるなよ」
これからなんだぞ、と牽制する視線を向けられて、誤魔化す笑みを浮かべる。スカウトされた当初から面倒を看てもらっていることもあって、どうにも頭が上がらないのだ。
まぁ、口は悪いけど、悪い人じゃないし。いろいろお世話にもなってるし。この数年、呪文のように言い聞かせているそれを繰り返して、釈明する。
「本当に違いますから。ほら、前、言ったでしょ。幼馴染みに、いろいろ助けてもらってるって」
「あぁ、あの、兄貴の友達って言ってた、あれか」
納得したふうに頷いた菅原が、だったら、隠すなよ、と苦笑して、でも、と首をひねった。
「そのわりには、暗い顔してんな。最近、おまえ、調子良さそうだったのに」
「え、いや……」
「身体のメンテはちゃんとしろよ。おまえ、Domなんだから」
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