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「ですよね」
はは、と乾いた愛想笑いを浮かべる。
なにせ、病院に行け、と一番うるさかった人だ。現状を話せば、またいろいろと口を出されてしまうに違いない。
「なんとかなってんならいいけど。というか、病院行くの、なんであれだけ嫌がってたわけ? Subならたまに聞くけど。おまえ、するほうじゃん」
「まぁ、そうなんですけど」
歯切れ悪く応じて、準平はスマートフォンを片づけた。返事を先延ばしにする良い口実にしてしまったな、と思いながら。
――でも、まぁ、向こうも仕事中だろうし。
いまさらかもしれないが、日常を邪魔するつもりはないのだ。
「そういうとこ変わってるよな、おまえ。前も言ったけど、エスっぽい雰囲気で売ってもいいと思うんだけどな」
そういうDomが好きな女、多いんだよ、と続いた台詞を、準平は律義に否定した。軽口とわかっていても、あまり好きではないのだ。
「菅原さん。ご存じだと思いますけど、そういった嗜好とダイナミクスは関係が」
「わかってる、わかってる。でも、世間はそういう見方をするやつが、まだまだ多いってこと」
また始まったとばかりのおざなりさで言い分を流した菅原が、芝居がかった仕草で肩をすくめる。
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