ある豆の独白

1/8
前へ
/8ページ
次へ
 吾輩はグリンピースである。名前は……あ、おい、待て。行くなっ!  ふんっ。どうせ、俺らのことなんてお前たちはどうでもいいんだろ。だがな、少しぐらい時間をくれたっていいじゃないか。せっかくお前ら人間の中で有名な話の一文を覚えたんだから。  こほん。もう一度やるぞ。  吾輩はグリンピースである。名前はまだ無い。  ん?なんだ?俺なんかに名前をつけるやつなんかいないって?だから、永遠に名前なんて無いままだって?  そ、そんなこと分かってるっ。ただ、ただ、お前たちの気がひきたくて、インパクトのある文頭にしたかっただけだっ。つーか、実際に野菜一つ一つに名前つけているやつがいたら、鳥肌が立つわ!怖いだろ。料理目の前にして、「この子はリン子、この子はグリ男……」とかやってたら。名前なんてこっちから願い下げだっ。  な、なんだよ。その冷たい視線は。俺だって言いたくてあんな「吾輩は〜」ってセリフ言った訳じゃないんだぞ。誰があんなふてぶてしいやつのセリフなんて言いたいかっ。こんな風にしなきゃ、お前ら、俺にこれっぽっちも興味を持ってくれないだろうが!  ……まあいい。俺、今回はお前らに言いたいことがあるんだよ。いいか?よく聞けよ!?  お前ら、なんでそんなにも俺らグリンピースを嫌うんだよ!?  見た瞬間、一言目に「ゲッ」は無いだろう!なんだよ、その親の敵を見るような目はっ。俺なんかしたか?ただそこに存在していただけだろう?なんならお前らの役に立つためにいるんだぞ?  よし、せっかくだ。今回はお前らにグリンピースを好きになってもらおうじゃないか。俺、結構凄いんだぜ?  ……自意識過剰じゃないっ!なんなんだよお前ら、キィィッ!  覚悟しとけよ!
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加