こぼれ話1

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こぼれ話1

母は昔からホームドラマのような家庭に強い憧れがあった。 そんな母は長女である私に弟か妹を作ってあげたいと何度も言っていた。 家族愛に強い憧れがある母らしいと思う。 度々、弟か妹が欲しいかと問われる事が幼い頃からあった。 これはその時のお話。 「羽季、弟か妹ができたら嬉しい?」 そう母が問うのでまだ小学校低学年だった私はキョトンと目を丸くした。 「赤ちゃん?」 「そう、赤ちゃん。 羽季は赤ちゃん好き?赤ちゃんにきて欲しい?」 まだまだ幼い私は母の言葉にしばし思案して ふと思った。 「お母さん、赤ちゃんはどこにいるの? どうやって赤ちゃんはお家に来るの?」 お母さんは固まった。 幼い子供に子供ができるシステムをどうやって話せばいいのか分からなくなったのだろう 母は何を思ったのかこんな事を言った。 「デパートにいるの。 デパートに赤ちゃんが売っているの」 「赤ちゃんが?高い?安い? どうやって売ってるの?」 「ミルクやおむつとセットで売ってるのよ。 安くはないけど、羽季が本当に欲しいのなら買えなくはないかもね」 私は目をさらに丸くする。 そして、想像する。 デパートの商品棚にずらりと窮屈に並べられた赤ちゃんたち セット価格!と書かれた張り紙 その中から1人だけ選んで購入していく母 ゾッとした。 買うなら全部買わなきゃ可哀想だ。 「いらない」 「え、」 どうして?と言いたげな母に私はいらないともう一度強く拒絶をした。 そんな恐ろしい光景があるのものか。 赤ちゃんは生き物だぞ、自由に動き回れないなんて可哀想だ 1人だけ買って行ってもまだまだ赤ちゃんたちは窮屈に並べられているんだろう それも可哀想だ。 自分もそんなところに居たのか?そんなわけない。 そんなデパートあるものか。 もしそんなデパートがあったらお巡りさんがやってくる。 そしたら母はきっと捕まってしまう。 と、トンチンカンなことを思っていた。 大人になった今、デパートに行った時には必ずこの話を思い出す。 そして当時の想像に苦笑しつつホンモノに話すと コウノトリが連れてくるんだよと成人した娘にそんな事を言うホンモノ。 いや、どっちでもいいんだけどさ。 大人になって思うのは 子供に赤ちゃんができることをどうやって説明するのが正解なのか。 という問題だよね。 それぞれの家庭で違うんだろうけどさ。 でも絶対に自分の子供には言わないだろうなと思うのはデパートだね。 ミルクとセットで売ってるとか言われた日にゃ想像してトラウマだったからね。 ーこぼれ話1.終わりー
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