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「まさに十三階段の噂がある廃ビルがあるんだ。そこで『怪奇現象が起こると言われているビルを散策する体験』と『恐怖する感情』を記録する」
「……お金を払ってまで恐ろしい体験をしてみたい人がいるなんて、僕にはいまいち理解できないのですけど。かなりニッチな需要なんじゃないですか?」
イスルギは眉をひそめた。
「何を言っているんだね。心霊スポット巡りは娯楽としてはかなり人気が高いのだよ。——君は、人はなぜ身の毛のよだつホラー映画や小説、ゲームをやりたがるのか考えたことがあるかね? ちょっとした物音にびくつきながら、照明もテレビもつけっぱなしで眠れぬ夜を過ごし、もう二度とホラー映画は観ないと心に誓いながらもついまた観てしまう。よくあるだろう」
僕はないですとの言葉を無視して、イスルギは続けた。
「ホラーには依存性があるんだ。それには明確な理由がある。脳神経科学によると、恐怖の処理に関係する脳の部位と快感の処理に関係する脳の部位はかなり重複しているそうだ。人間は実際の危険は何もなしに恐怖を味わうことに快感を覚えているというわけだ。ちなみにね、アメリカ人がホラー映画に支出するお金は一年間に五億ドルにもなるそうだよ」
怖さは金になるのだとイスルギは言った。
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