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(なんだこのガキ……)  いがぐり頭に真っ直ぐな太眉。前をみつめた目に意志の強さが現れているようだった。あと五年もすれば運動部の部長でもやっていそうな——。  自分の体であったなら、思わず眉をひそめていただろう。  こういった奴は自分のような軽薄そうな人間を嫌うことが多いのだ。誰とでも距離を詰めるのは得意と自負してはいるが、攻略難易度が高い手合いだった。  まあ一言でいうと——苦手なタイプなのだった。  だが間宮は、この子供に安堵感にも似た親しみを覚えているのを感じた。 「それとさ、次に来るのは幽霊列車だから乗れないよ」  いがぐり頭が海を眺めながら付け加えた。 (幽霊列車……?)  訝し気に思っていると、構内アナウンスが入った。  一番線に、列車が参ります――。  やがて一両編成の電車がホームに入って来た。  思わず乗車位置から退()こうとしたが、間宮は動かず、電車を見つめたままだった。  ぎいいっと軋んだ音を響かせて電車は停車した。車窓からすし詰め状態の車内が目に入り、俺は戦慄した。  乗客は皆、顔が青白く、揃って白目を剥いていたのだ。弛緩した口から紫の舌がだらりと垂れ下がっている者もいた。  悲鳴は上げることができなかった。自分の体じゃないからだ。  あまりの光景に、脱兎のごとくその場から逃げ出したかった。だが――足は勝手に前に踏み出した。  間宮はこれに乗る気だろうか。 (冗談じゃねえぞ!!)  きっと——いや絶対に恐ろしいことになる。  間宮の体は吸い込まれるように黄色い点字ブロックを越え、電車の入り口に足をかけた。 (やめろ間宮……! 絶対に駄目だ——)  その時、ぐいっと腕を引かれた。
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