正守の家

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正守の家

 信濃川の合流する海水浴場は、正守の家から徒歩三分のところにあった。 正守の家は山の中腹にあったから、子供時分は兄弟姉妹といっしょに、転げ落ちるように海に駆け付けたものだった。 日本海の海は、朝日は昇らず夕陽が沈む。子供たちは、夏は日の入りまぢかまで遊んでいる。 夕陽が沈むと同時に、海の色がミルク色に変わる。 奇跡のような大スペクタクルを、惜しげもなく毎日のように眺めては、それが当たり前とばかりに大して感慨などもたなかった。  正守は七人兄弟の末っ子で、一番上の姉の幸恵とは二十も歳が違う。 兄弟たちはおしゃべりが大好きだったが、正守は年下だし、どうにもうまく入っていきづらくて、兄弟姉妹に押し負けてしまうことが多かった。
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